宮脇康之(現:宮脇健)さんは、ファミリードラマ『ケンちゃんシリーズ』のケンちゃん役で、1970年代の初めに大ブレイクを果たします。そのまま『売れっこ子役タレント』の元祖となり、その当時の人気たるや、もはや社会現象というべき凄さなのでありました。
そして…
宮脇さんはその後の人生の波乱万丈ぶりにおいても、特に有名な方でなのであります。はい。
宮脇さんの激動の人生に関しては、ネット上でも多くの方が取り上げられておりますし、御本人もその辺りを詳しく本を書かれていたり、さらには『あの人は今?』的な番組の御出演も多いので、ここで僕が改めて語る話などあるのかという事なのですが…
しかしながら、1970年生まれである僕は、一般的な見方とは少しだけ異なる視点で宮脇さんを見ていたのです。今日はそんな噺の第一回です。
宮脇康之さん=ケンにいちゃん
僕が『ケンちゃんシリーズ』を視はじめたのは、ちょうど『ケンちゃん役の引き継ぎ』にあたる時期で、宮脇さん演じる『ケンちゃん』には、岡浩也さん演じる『ケンジ』という弟がいたのです。
言うなれば『ツインケンちゃん制』の時期ですね。そしてむしろそのスタイルの方が、僕にとっては『ケンちゃんシリーズ』のオリジナルであり、そして全てなのでありました。
そのうち『ケンジ』の方が『ケンちゃん』と呼ばれるようになり、宮脇さんは『ケンにいちゃん』に格上げ(この場合は格下げか?)になっていきました。つまり僕にとっては『宮脇さん=ケンちゃん』ではなく、『宮脇さん=ケンにいちゃん』だったのです。そして中学生になっていた宮脇さんは、思春期特有のスラっとした背格好になっておりまして、まさにお兄さん感が溢れていたのです。
だから一般的なイメージが『宮脇さん=可愛い子ども』なのに対して、僕はといえば『宮脇さん=カッコいいお兄さん』なのです。考えてみれば僕には兄がいませんでしたから、余計にその印象を強く感じたのかもしれません。
忘れられないエピソード
そしてそんな『ケンにいちゃんもの』の中で、僕が忘れられないエピソードが一つあるのです。
その思い出深い回。詳しいカテゴライズについては、僕は本放送の一回限りしか視ておらず、その後、40年以上も経ってしまっておりますから、なんとも曖昧な部分があるのです…が、Wikipediaの各話リストなどを見る限り、これは『フルーツケンちゃん』の『台風とキャンプ』という回なのだろうと思います。情報がタイトルのみしかないですが、たぶんこれがビンゴなのだろうと。
反抗期ケンちゃん
このお話は『反抗期のケンにいちゃんが、ある時お父さんと大喧嘩して家を飛び出してしまう』ということから始まります。まあ、有りがちといえば有りがちな「もううるさい!僕にかまうな!」「あんなやつ、ほっとけ!」系のガチ親子喧嘩ですが、こと日々平和なケンちゃんシリーズにおいては、その程度でも本当に珍しいエピソードであり、特に幼なかった僕にとっては、かなりビックリさせられるお話だったのです。
そこに登場したのは…
それで家を飛び出したケンにいちゃんは、キャンプ場にテントを張って1人で寝ようとします。しかしそこに台風が襲いかかるのです。テントは吹き飛ばされそうになり、食事用にと持ってきたパンはもう泥まみれです。雨水は容赦なくテント内に侵入し、カッコいいこと言って飛び出したくせに、ケンにいちゃんはもう半ベソ状態なのでした。そして真夜中になっていよいよ危ないという感じになってきます。見ているこちらのハラハラドキドキがマックスになったところで、突然テントが開きました。そこに入って来たのは大喧嘩していたはずのお父さんだったのです。それも満面の笑顔で!
実はこの話の記憶はここで途絶えているのです。要はあまりの安心感と感動に、僕の頭の中は真っ白になったのですね。そして普段は何となく冴えないケンちゃんのお父さんが、こんなに頼り甲斐のある人だったことと、さらには親子喧嘩など無かったよう接する『包容力』というものを目の当たりにして、もう胸がいっぱいになっていたのでありました。
感動の原体験
もちろん僕のその後の人生において、感動するシーンはいくつもありましたが、この時の二人の様子は、もう『感動の原体験』というより他はなかったのです。だからこそ、この心に刻まれた思いは、今でもアリアリと残っているのですね。そしてその思いこそが、僕の宮脇さんに対する少し複雑な感情に、直結しているのだろうとも感じるのです。
(そういえば僕が初めて上京した1988年、地下鉄の中でお父さん役の牟田悌三さんを見かけたことがありました。あの威厳のあるデカい顏と、たじろぐばかりの芸能人オーラですぐに気がつきました。御本人を目の当たりにできて、やっぱりとても感慨深いものがありましたね)
宮脇さんは子役を脱却していた
宮脇さんは『フルーツケンちゃん』を最後に『ケンちゃんシリーズ』のレギュラーを降板します。ここで皆さんのイメージですと、おそらく「天才子役も成長したらタダの人。ケンちゃん役を降ろされた宮脇康之の転落人生が始まる」という感じなのでしょうが、実際は少し異なります。そんなに話は解りやすくはないのです。
売れっ子ティーンエイジャー
『ケンちゃんシリーズ』を卒業した宮脇さんは、今度はターゲットがもう少し上の世代の『アイドル青春ドラマ』に出演するようになります。最初は木之内みどりさん主演の「刑事犬カール」に始まり、榊原郁恵さん主演の『ナッキーシリーズ』、さらには三原順子さん出演の『GO!GO!チアガール』等々と、宮脇さんは数年にわたってゴールデンタイムのドラマに出演し、それも準主役級の扱いでしたから、決して落ちぶれてなどいなかったのです。むしろ当時は「上手いこと子役から脱却したなあ」という捉えられ方をしていました。
サブで存在感を発揮
僕は中でも『ナッキーはつむじ風』が好きでした。ハチャメチャ学園コメディのこの作品。主演のナッキー役の榊原郁恵さんは『健康美人』というタイプで、正直『王道ヒロイン感』があまりないのですが(失礼)、そのナッキーに恋してしまうのが、宮脇さん演じる『2枚目半のキヨシ』だったというところがポイントだったのですね。なんというか芸達者な彼が廻す学園模様にリアリティがあったのです。だからこそ彼等の青春は等身大であり、下の世代の僕らも憧れを持って感情移入できたのです。
ポジティブな恋愛発覚
その後、宮脇さんは1980年に「GO!GO!チアガール」で共演した現参議院議員の三原順子さんとの熱愛を報じられます。宮脇さんはその時は19歳でした。お相手の三原さんは『3年B組金八先生』の山田麗子役でブレイクし、松田聖子さん、河合奈保子さんと並ぶ「新三人娘」として人気が急上昇していた時期ですから、二人の恋人宣言は大いに話題になりました。
でもそれは『ケンにいちゃん』をずっと視てきた僕からすると、全然不思議な事でもなかったのです。この同時期に三浦友和さんと山口百恵さんの結婚があったことなどもあり「ケンにいちゃんもそろそろ結婚する年齢なんだな。スター同士お似合いだな」くらいに思っていたわけですね。
ケンにいちゃんが二十歳に
それからしばらくすると宮脇さんは20歳になりました。「僕が20だなんて、自分でも信じられないです。ここまで育ててくれた両親に感謝しています」と笑顔で答える彼の姿に、僕は11才でありながら、まるでちょっとした『育ての親』のような感覚を味わっていたものです。成人おめでとう!これからの活躍に期待します!と。
しかし。
宮脇さんはその日を境にプッツリと姿を消したのでした。
つづく
アイドル&芸能人の噺
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