昭和アニメのトラウマエピソードの御紹介です。前回の「一休さん」に続き、今日は僕が愛する新ルパン三世(第2シリーズ)から「悪魔がルパンを招くとき」を御紹介します。謎の人物がルパンを操ってまで果たそうとした事とは何なのか? 今日はそんな噺です。
軽いと言われがちな第二シリーズだが…
ルパン三世の第二シリーズは1977年から1980年まで155回も放送された長寿アニメでした。アダルト路線だった第一シリーズに対し、全年齢向けゆえの「軽さ」というイメージを持たれている第二シリーズですが、その長い放映の中には、あえて「怖さ」を押し出したエピソードが、いくつか混在していたのです。
今日ご紹介するのは新ルパン三世の第87話「悪魔がルパンを招くとき」です。ナチスへの復讐心に駆られたピーター・ヤコブの狂気と悲劇。衝撃のラストシーンをお見逃しなく。
新ルパン87話「悪魔がルパンを招くとき」
トラウマになったポイント
メフィスト・フェレス
作品中でも語られている通り、メフィストフェレスの名はゲーテの「ファウスト」に登場する誘惑の悪魔から用いられています。そしてその正体のピーター・ヤコブは、かつてナチスのユダヤ人迫害により両親を虐殺され、ヤコブ家に伝わる二つの宝石を奪われた過去を持っていました。その恨みから元ナチス党員の大量虐殺を企てたのです。
しかしその計画はルパンに阻まれ、風船爆弾とともに成層圏を漂うことになったピーター。その無念の形相は、新ルパンが全年齢向けアニメであるがゆえに、当時の子供たちの心に強烈なトラウマを残すこととなったのです。
巨大風船爆弾
メフィスト・フェレス以上に、当時の子供たちを恐怖のどん底に陥れたのは、彼が大虐殺の道具に用いようとした巨大風船爆弾でした。この悪魔を模した巨大な造形の異形さ…これは当時小3くらいだった僕の心の中にも深く刻み込まれたものでした。
サン=サーンス 交響曲第3番「オルガン付き」
巨大風船のBGMとして流れるこの曲。その第二楽章第二の冒頭のオルガンの不協和音は、聴いている人の不安感というものを強く後押ししています。御存じのように新ルパンのBGMは、あの大野雄二さんが担当されているのですが、その大野サウンド以外にも、要所要所で、クラシックや流行歌などを物語の中に取り入れていたのです。
新ルパン三世で取り上げられるクラシック曲には、かなりマニアックなものが多かった印象があります。きっとスタッフの中にクラシックマニアの人がいたのでしょうね。
大学生になってから
僕が大学生の頃の話ですが、うちに遊びに来た先輩が『僕がルパン三世のビデオを全話を持っている』ことを知ると、最初にリクエストしてきたのが、この「悪魔がルパンを招くとき」だったのです。
先輩曰く「あれはいまだにトラウマなんだ」とのことで、それを克服させるべく、さっそく視せてあげたのですが…改めて怖がっていましたね(笑)。もちろん初見の頃(小学生)に比べて、大学生の頃にもなると、既に様々な英知が頭の中にはあり、当然、このピーターの悲しい背景に対しても、大いに同情する気持ちが沸いてはいたのですが…それでも怖いものは怖いという感じでしたね。はい。
今にして思うこと
今回、この話を僕も久々に頭から通して視たのですが、「ナチスのユダヤ人迫害」という難しいテーマを、ホラーファンタジーという形式の中に上手く落とし込んでいる、なかなかの名作エピソードだと思います。そして衝撃的なラストシーンについてですが、これは今視ると「この表現を絶対にやりたかった」という『作り手の覚悟』というものを、そこから深く感じることができるのです。
今はコンプライアンス的に、表現に色々と制約がかかっている時代なのですが、そんな中でも、こと作り手側に対しては、いつまでも「覚悟を持った表現」というものを期待していきたいなと思っております。
ルパンのお噺
悪魔がルパンを招くとき【新ルパンのトラウマエピソード】1979
風魔一族の陰謀【ルパン三世】衝撃のキャスト交代事件 1987
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