悪魔がルパンを招くとき【新ルパンのトラウマエピソード】1979  スキップしてメイン コンテンツに移動

悪魔がルパンを招くとき【新ルパンのトラウマエピソード】1979 

 昭和アニメのトラウマエピソードの御紹介です。前回の「一休さん」に続き、今日は僕が愛する新ルパン三世(第2シリーズ)から「悪魔がルパンを招くとき」を御紹介します。謎の人物がルパンを操ってまで果たそうとした事とは何なのか? 今日はそんな噺です。


軽いと言われがちな第二シリーズだが…

ルパン三世の第二シリーズは1977年から1980年まで155回も放送された長寿アニメでした。アダルト路線だった第一シリーズに対し、全年齢向けゆえの「軽さ」というイメージを持たれている第二シリーズですが、その長い放映の中には、あえて「怖さ」を押し出したエピソードが、いくつか混在していたのです。

今日ご紹介するのは新ルパン三世の第87話「悪魔がルパンを招くとき」です。ナチスへの復讐心に駆られたピーター・ヤコブの狂気と悲劇。衝撃のラストシーンをお見逃しなく。


新ルパン87話「悪魔がルパンを招くとき」

 オープニングテーマは「ルパン三世79」。雨の中、そろそろ寝ようとするルパンと次元。

 ファンと名乗る怪しげな男が何か届けに来る。中身はかわいらしい人形だった。

 ルパンはすっかり気に入ってしまい御機嫌に。 「悪魔がルパンを招くとき」。

 深夜、人形の目が怪しく光り動き出す。人形についていくルパン。

 すると怪しげな男メフィストフェレスが登場。「ルパンの心臓を持っている」。

 心臓を握られ苦しむルパン。そして操られるルパン。

 ・・・が、それは悪夢だった。

 TVでは身に覚えのない盗みのニュースが!

 五右エ門「それは催眠術人形だ」。深夜みんなが見守る中、ルパンは・・・

 人形に操られたルパン。メフィストフェレスと一緒にお宝を盗みに行く。

 不二子が目星をつけたお宝は…ユダヤ人迫害でヤコブ家から奪われた宝石だった。

 メフィストフェレスの正体は、ヤコブ家のピーター・ヤコブだと不二子が暴く。

 「悪魔座旗揚げ」の通知が届き、ベルリンスタジアムに元ナチスの老人が集められる。

 巨大水素人形にダイナマイトが! 観客を逃がすパンファミリー。

 「最初からナチ野郎を吹っ飛ばすつもりだ」しかしそのピーターに杭が突き刺さる。

 そのまま巨大風船とともに上空に消えていくピーター。

 機中のルパンと次元。ピーターの両親の墓にダイヤを備えようとするルパン。

 機内が騒がしくなる。窓の外には…

 あの風船とヤコブの姿が…

「あいつもきっと両親のところに帰るつもりなんだよ」


トラウマになったポイント

メフィスト・フェレス

作品中でも語られている通り、メフィストフェレスの名はゲーテの「ファウスト」に登場する誘惑の悪魔から用いられています。そしてその正体のピーター・ヤコブは、かつてナチスのユダヤ人迫害により両親を虐殺され、ヤコブ家に伝わる二つの宝石を奪われた過去を持っていました。その恨みから元ナチス党員の大量虐殺を企てたのです。

しかしその計画はルパンに阻まれ、風船爆弾とともに成層圏を漂うことになったピーター。その無念の形相は、新ルパンが全年齢向けアニメであるがゆえに、当時の子供たちの心に強烈なトラウマを残すこととなったのです。


巨大風船爆弾

メフィスト・フェレス以上に、当時の子供たちを恐怖のどん底に陥れたのは、彼が大虐殺の道具に用いようとした巨大風船爆弾でした。この悪魔を模した巨大な造形の異形さ…これは当時小3くらいだった僕の心の中にも深く刻み込まれたものでした。


サン=サーンス 交響曲第3番「オルガン付き」 

巨大風船のBGMとして流れるこの曲。その第二楽章第二の冒頭のオルガンの不協和音は、聴いている人の不安感というものを強く後押ししています。御存じのように新ルパンのBGMは、あの大野雄二さんが担当されているのですが、その大野サウンド以外にも、要所要所で、クラシックや流行歌などを物語の中に取り入れていたのです。

新ルパン三世で取り上げられるクラシック曲には、かなりマニアックなものが多かった印象があります。きっとスタッフの中にクラシックマニアの人がいたのでしょうね。


大学生になってから

僕が大学生の頃の話ですが、うちに遊びに来た先輩が『僕がルパン三世のビデオを全話を持っている』ことを知ると、最初にリクエストしてきたのが、この「悪魔がルパンを招くとき」だったのです。

先輩曰く「あれはいまだにトラウマなんだ」とのことで、それを克服させるべく、さっそく視せてあげたのですが…改めて怖がっていましたね(笑)。もちろん初見の頃(小学生)に比べて、大学生の頃にもなると、既に様々な英知が頭の中にはあり、当然、このピーターの悲しい背景に対しても、大いに同情する気持ちが沸いてはいたのですが…それでも怖いものは怖いという感じでしたね。はい。


今にして思うこと

今回、この話を僕も久々に頭から通して視たのですが、「ナチスのユダヤ人迫害」という難しいテーマを、ホラーファンタジーという形式の中に上手く落とし込んでいる、なかなかの名作エピソードだと思います。そして衝撃的なラストシーンについてですが、これは今視ると「この表現を絶対にやりたかった」という『作り手の覚悟』というものを、そこから深く感じることができるのです。

今はコンプライアンス的に、表現に色々と制約がかかっている時代なのですが、そんな中でも、こと作り手側に対しては、いつまでも「覚悟を持った表現」というものを期待していきたいなと思っております。


※「一休さん」のトラウマエピソードはこちら

【一休さん】国民的アニメのトラウマエピソード 1975‐1982


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