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ラジスコ7「昭和の冒険少年のための秘密アイテム 」1980

昭和の少年は冒険を常に夢見ていて、夏休みと秘密基地と秘密アイテムが大好きでした。今日は僕が10歳の誕生日にゲットした「究極の秘密道具」についての噺です。


「ラジスコ7」とは?



「ラジスコ7」とは1978年にトミーが発売した少年向けの玩具です。薄手の弁当箱大のボディーに、7つ道具がコンパクトにまとめられているという、ガジェット式の秘密アイテムでした。

その機能は?

1ラジオ
2望遠鏡
3顕微鏡
4ライト
5日時計
6ミラー
7磁石

この機能の中で、特筆すべきはラジオの存在ですね。まあラジオといってもイヤホン式のモノラルAMラジオだったのですが、それでも当時の子供にとって、ラジオはかなりの高級アイテムだったのです。そしてそれがフィーチャーされている「ラジスコ7」は、まさに夢の道具なのでありました。

携帯メカブーム




「ラジスコ7」の発売は1978年でしたが、実際に子供たちの間にそれが広まったのは、1980年のことだったと思います。この1980年はソニーのウォークマンや任天堂のゲームウォッチが大ブームとなった年でもありまして(ちなみにアニメのドラえもんも二年目で絶好調でした)、それゆえ『携帯メカ』が子供たちの憧れとなる下地が大いにあったのです。
   
子ども向け雑誌「テレビマガジン」の広告でこの商品の存在を知った僕は、そのカッコよさに一気に心を奪われてしまいました。そしてその日から僕は「にわか良い子」になり、夏休み初旬の自分の誕生日のプレゼントに、この「ラジスコ7」を買ってくれるよう、あからさまに態度で要求していったのです。

10歳の誕生プレゼント

正に「念ずれば通ず」で、僕は1980年の7月29日、自分の10歳の誕生日に「ラジスコ7」を買ってもらいました。喜び勇んで包みを開けて、新品のそれを箱から取り出しますと、今でいうところの「新車の匂い」が辺りに漂いました。

(真面目な話、僕は未だに新車や新品のパソコンに接するたびに、この「ラジスコ7」の事を思い出すのです)

「ラジスコ7」各機能紹介

1ラジオ

取り敢えず僕はラジオをつけてみます。僕が住んでいた福島のラジオ環境はといいますと・・・当時の東北は、あまりにもロシア放送と朝鮮放送の電波が強すぎだったのです。恐るべしは妨害電波。一体何を企んでいるんだレッドチームという感じですが・・・まあそれはさておき、わけのわからない電波と言語に阻まれて、地元のラジオ局にチューニングを合わせるのもままならない状況だったわけですが…そこは想像補正です僕はまるでジェームズボンドにでもなったような気分で、合わせ辛い「ラジスコ7」のダイヤルで、スパイチックに電波(ラジオ福島オンリー)を傍受していたのでありました。

2望遠鏡

倍率は申し訳程度で2倍ほどでしょうか・・・裸眼で目を凝らした方がよっぽど良く見えたのではないかと思うのですが、スッ(カシャッ!というようなカッコいい音ではない)と伸びる覗き口は、なかなかの秘密道具感を醸し出しておりました。

3顕微鏡

望遠鏡とスイッチ切り替え式の共通使いですが、意外と使えた機能でした。付属のライトで対象物を明るくできるのもポイントが高く、小さな虫のチェックなどに活用してました。

4ライト

通常点灯や顕微鏡補助という利用法の他に、夜こっそりラジオを聴いている際には、布団の中の灯り代わりにも使えました。しかも今説明書を見ると、このライトは「プッシュすれば点滅灯にもなる」とのこと…いやはや、今まで僕はそのことを全く知りませんでした。でもそんな機能はいらないですね(断言)。

5日時計

磁石とペアで小さくまとまっていて、デザイン的に見ても、なかなか格好のいい作りでした・・・が、計測用の線が細すぎるのか、時間を示すメモリに全く影が落ちないのです。そんなわけで全然使えない代物でした。

6ミラー

潜望鏡というか、切り返して90度と180度の様子を見ることのできる覗き穴がついていました。まあそれなりに見ることは出来るのですが、しかしながら何に使うのか全く分からない機能でした。

7磁石

針をちゃんと動かすには、磁力がいまいち弱かったようです。


双子山探検

自慢のアイテム「ラジスコ7」の実戦投入の機会は意外と早く来ました。夏休み明けのある日、僕らは校舎の4階から遥か彼方に見える「双子山」の探索に行く事を決意しました。ずっと前から存在だけは知っていたものの、誰も行ったことのない未知の場所です。当時は学区外に子どもだけで出る事は厳しく禁じられていた時代でしたが、だからこそ冒険感も高かったのです。

待ちに待った日曜日。僕はリュックに「ラジスコ7」を忍ばせ、仲間とともに、双子山へと冒険へ旅立ちました。


双子山に侵入

僕らは未開の地、双子山に到着しました。双子山は山というより小高い森という感じで、山頂にアプローチする道など全くありません。僕らは道なき道を山頂をめざし歩きます。最大の目的は「双子山のそれぞれの山頂を踏破する」ことでした。この「薄暗い樹木の中」という状況では、僕の「ラジスコ7」が大活躍してくれるはずです。何と言ってもそれには方位磁針もライトもついているのです。

実戦では役立たず

しかし…山に入り、生い茂る樹木を(お手製の)木刀でなぎ倒しつつ、謎の小動物(たぶん草の中を逃げるヤマカガシ)を追いかける僕らには、訳のわからない秘密道具を取り出している暇など、当然ないわけです。残念ながら完全に使いどころを見失われた「ラジスコ7」はリュックの中で「沈黙の物体」と化していました。その後、双子山探索を続け、見事に山頂を踏破する頃にもなると、僕はそんなものの存在などすっかり忘れておりました。

そんなわけで「ラジスコ7」は実戦の場においてはまるで役に立たない代物だったのです。正直、こんなものを持っていくくらいなら、水筒でも余分に持って行った方がよっぽど良かったのですね(冗談抜きで新陳代謝の激しい子供はのどがすぐ乾くのです)。これは双子山冒険の最大の教訓でした。はい。

こうして僕の「ラジスコ7」熱は、東北の短い夏同様に、あっという間に冷めていってしまったのでした。


「ボーイズコマンダー11」とは?

「ラジスコ7」が全く実戦に向かないことに僕が気がついた日から、丸1年ほど経った1981年の夏に、学研が「ボーイズコマンダー11」という、もう言い逃れ出来ないほど「ラジスコ7」を丸パクリした玩具を発売しました。


一回り小さくなってはおりますが、見た目は「ラジスコ7」そのまんまでありまして、当時小学5年だった僕は「恥を知れ学研!」と割とマジで思ってしまいました。なんだかんだ言っても僕は「ラジスコ7」贔屓だったというか…やっぱりそれなりの思い入れはあったのです。はい。
それに「ボーイズコマンダー」という名前もなんだかなあという感じですよね。当時の僕らは子供であるがゆえに、逆に「ボーイズ」なんて子供向けの名称はあまり好きではなかったのです。


「ボーイズコマンダー11」の機能

そんなわけで恥知らずな「ボーイズコマンダー」は、その機能も「ラジスコ7」から丸パクリしていました。ではのこり4つの新機能はと言いますと…

1望遠鏡
2潜望鏡
3ルーペ
4ラジオ
5ペンライト
6方位磁石
7日時計
8高度計
9カウンター
10ふえ
11メジャー

うーん、なんだか「高度計」と「カウンター」が謎ですが、まあおそらく調べる必要がないほどに、全く使えないものでしょう(断言)。それに「ふえ」と「メジャー」って、ふざけるにも程があるというか…これで『少年の冒険心をバッチリ把握!』と宣伝文句を謳うのは、もう片腹痛しという感じですね。そもそも「ラジスコ7」のおかげで、この手のものは「使えぬ秘密道具」&「秘密のままの秘密道具」と十分に学習していた僕ですから、この「ボーイズコマンダー11」に対しては、より一層に覚めた目を向けていたものでした。

「ボーイズコマンダー19&21」

そして今回、こうやって振り返るまで僕は知らなかったのですが、実は「ボーイズコマンダー11」には「ボーイズコマンダー19」と「ボーイズコマンダー21」という後継機種(両機種同時発売)があったそうなのです。

 
「ボーイズコマンダー19」
上部に写真入りの空箱が2つ配置

「ボーイズコマンダー21」
上部にラジオ&イヤーユニットを配置

「ボーイズコマンダー19&21」の機能

そんなわけで、一気に増えた機能をご紹介しますと…

1フレキシブルライト
2望遠鏡
3高度計
4フレネルレンズ
5反射鏡
6万年カレンダー
7反射テープ
8マップメジャー
9メジャー
10方位磁石
11日時計
12三角測量
13分度器
14エンピツ
15メモパッド
16ホイッスル
17ミニスケール
18液晶温度計
19メタルツール
20AMラジオユニット(21のみ)
21スーパーイヤーユニット(21のみ)

というラインナップですね。もはやイミフというか、どうでもいい機能が過半数を占めています。そして学研お得意の「上位機種もありますよ」という作戦は実に嫌な感じですね。このパターンは電子ブロックでもありましたからね。

カッコ悪すぎるデザイン

この「ボーイズコマンダー19&21」は「ボーイズコマンダー11」の後継機というには、かなり無理があるデザインだったと思います。

ぶっちゃけ、かなりカッコ悪いデザインに変化してますね。進化の迷走っぷりが末期の三葉虫状態というか…まるで出来の悪い水鉄砲のようなデザインは「ラジスコ7」や「ボーイズコマンダー11」のようなスタイリッシュさは皆無ですし、そもそも別パーツがあるというのは、この手の商品のコンセプトから大きく外れていると思います。そしてその裏に見え隠れする『あわよくば追加パーツも発売しよう』という商売心も、なんだか実に気に入らないですね。はい。そんなわけでこの後の後継機が発売されなかったのもよくわかるというものです。そもそもパクリなんてものは…(以下、小一時間)。


MY「ラジスコ7」はどうなったのか?

話は「ラジスコ7」に戻りまして…双子山探検でダメ出しされた「ラジスコ7」ですが、その後は『僕専用のラジオ機』として大活躍してくれました。その後、僕は電波を受信しやすい時間にオンエアしていた『ポムポムジョッキー 秋野太作の勉強会』という番組のリスナーとなります。そして番組にハガキを書き、それが秋野さんに読まれ、その後はいっぱしのラジオ少年に成長していくわけです。

子供から少年へと成長していく時期に、「ラジスコ7」はいつも僕の枕もとにありました。その遠い記憶というものは、今の僕が今の僕であることの、大きな理由の一つになっているのです。


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