スキップしてメイン コンテンツに移動

バブル期のお酒『平成元年の懐かしいお酒たち』いとしのエリー 1989

バブル絶頂期の1989年に行われた酒税法の大改正により、日本のお酒市場は再構築の波に飲まれました。中でも「特級酒」が廃止されたウィスキーと日本酒は、その改革に特に大きな影響を受けていったのです。

今日は難しい話は抜きにして、今は昔の平成元年(1989)に、バブル絶頂期の日本を彩った『懐かしくも美味しかったお酒』の噺をしていきたいと思ってます。


バブル期のビール


1987年に勃発した「ドライ戦争」は、アサヒ「スーパードライ」の大圧勝に終わり、その戦後と呼ぶべき1989年は、「アフタードライ」の商品を各ビール会社が相次いで発表した年でありました。


モルツ(サントリー)

1986年発売のモルツですが、ドライ戦争後に猛プッシュされ、王者スーパードライに対し「私はドライではありません」という挑発的なキャッチコピーで再登場しました。その言葉が示す通りドライビールの「辛口」に対して、麦芽100%ビールの「ふくよかな味」を売りにしたビールです。サントリー系列の飲食店にも次々出荷され、今に至る大ヒット商品になりました。

CMは郷ひろみ、三谷友里恵夫妻や山本浩二さん、古今亭志ん朝師匠などが出演し、まったり感を演出してました…が、今となってはこの御夫婦、(この時点でも)とてもドライに見えてしまうのは僕だけでしょうか?


ファインピルスナー(キリン)

アサヒにビール市場のTOPの座を奪われたキリンは、主力の「キリンビール」を「キリンラガービール」に名称変更(1988)し、複数の新商品と共にビール販売をマルチ展開していきました。グリーンなラベルが美しい「ファインピルスナー」もその一つで、ピルスナーの故郷のチェコの麦芽を使用した鮮度の高いビールというのが売りでした。


しかしこの時期はキリンも含めてビールのシェア合戦が激しい時期であり、勝負に出遅れたファインピルスナーは、その影響で在庫がダブつき、肝心の鮮度が落ちてしまったという漫画のような展開を見せていきます。結果ブレイクする前に失速していまいました。

CMは三田村邦彦さんと古手川裕子さんが出演し、家での夫婦呑みを誘うものです。「ベルベットな泡 ベルベットな味」という何とも謎めいたキャッチコピーの意味は、未だによく分かりません。


ドラフト(サッポロ) 

キリンがキリンビールを「キリンラガービール」に変更したのも驚きでしたが、サッポロは主力を黒ラベルのビールから、新商品の「サッポロドラフトビール」に変更しました。まさに社運をかけたビールで、若者向けに飲みやすく爽やかなテイストに仕上がっておりました。


しかし黒ラベル廃止に対するサッポロビールファンの反発は想像以上に大きく、サッポロは慌てて黒ラベルを復活させます。今度はそのあおりで「ドラフト」は2年と持たずに廃止となってしまいました。まあ、改めて言うまでもなく大失敗ですね。

CMはアカデミー賞やグラミー賞を獲得してノリにノッていた時期の坂本龍一さんが起用されていました。BGMも坂本さん本人が担当した「Undo#1」という曲で、その音源の入手の困難さから、長らく「坂本龍一の隠れた名作」とされていた曲です。


バブル期のウィスキー

酒税改正で特級の区分が無くなり、高級ウイスキーが多少お求め安くなったのがこの1989年でした。またサントリーのブレンテッドウィスキーの最高峰である「響」が発売されたのもこの年でした。


響17年

サントリーが90周年を記念して1989年に発売した高級ウィスキーです。「響」という名称は、これに先立って1986年に開館したサントリーホールなどもイメージさせるものとなっており、お酒の中身だけではなく、24面カットの美しいボトルなど、ウィスキーと芸術との融合をコンセプトにしたお酒になっています。これもバブル期ならではの発想でしょうね。


バランタイン17年

バブル期の接待を伴う飲食店においての定番は「バランタイン17年」です。それも「水割り」が絶対でした。

これはお酒そのものというより、バランタイン17年と「アイスペールとミネラルウォーターが鎮座したテーブル」で、若いホストやチャンネーの皆さんが、コングとマドラーを用いて「バランタインの水割りを作る」という様式美が、あの時代には求められていたと言う感じですね。


ウイスキーソーダ

要はハイボールですね。「今はウィスキーの人気が高まってきている!」という理由で(たぶん)短絡的に作られたのだと思います。


しかしバランタイン17年で語りましたように、バブル期に人気だったのは、あくまで「水割りを作る」という様式美でありまして、当然のように、この商品もいつの間にかなくなってしまいました。
CMは宇津井健さん主演の「東京警備指令 ザ・ガードマン」を、そのままそっくり再現したものになりました…って、リアルタム世代じゃないから僕にはさっぱりわかりません。それにいくらなんでも男むさすぎです。こんなの飲みながら仕事するわけにもいかないしなあと。

サントリーホワイト

サントリー定番のロープライス商品ですが、この1989年には酒税改正による等級廃止に伴い「新ホワイト」としてリニューアル発売されました。


あのレイ・チャールズにサザンオールスターズの名曲「いとしのエリー」を歌わせたCMには、みんなびっくりしました。当時は外タレのCMの全盛期でしたが、アメリカエンタメのラスボスまで召喚してしまったのですから、まさにバブルパワーの極みという感じですね。
曲に関しては、実は当時聴いた際には「なんかちょっとイマイチだな」なんて思ってしまったのですが、30年以上の時を経た今聴きますと、さすがは帝王といいますか…歌声が何とも胸に染みてきます。「一緒に飲んでくれよベイビー♪」という英語歌詞もいいですね。

Smile for me, won't you, baby
Forever you'll be on my mind
Drink with me won't you baby
We're gonna make it right this time♪

バブル期のワイン

バブル期の日本は「イタ飯ブーム」で、食中酒としてのワイン需要がありました。さらには円高の恩恵で高級ワインの価格が下落したことも重なり、「第二次ワインブーム」が巻き起こりました。今もセブンイレブンで細々と続いている「ボジョレーヌーボーの初飲み文化」が始まったのもこの頃でした。


マンズ・ヌーヴェレール

キッコーマンが「マンズ」ブラントでワイン業界に参入し、低価格のワインを発売しました。TVコマーシャルには、当時「サディスティックミカバンド」の再結成で話題だった桐島かれんさんを起用します。桐島さんの突き抜けた明るさが実に時代とハマっており、CMもイメージを生かしたカラフルな作りでとても印象に残りました。


マンズ・ヌーヴェレールCM 1989/桐島かれん

BGMはムーンライダーズのCMオリジナル曲です。「ワインが飲みたいただそれだけ~♪」というキャッチーなフレーズは今でも強く印象に残っています。とてもいい曲なのでフル音源が欲しいですね。

ポレールワイン・クレア

サッポロビールのワインブラント「ポレール」から出された「クレア」。こちらは当時気鋭のボサノヴァシンガーだった小野リサをTVコマーシャルに起用します。

名曲「星の散歩」が印象的に使われていますね。ちなみに「ポレール」とは「北極星」という意味だそうです。

バブル期の日本酒 

日本酒も酒税法の大改正で特級の枠組みが無くなり、それまで高級酒と言われていたお酒が値落ちしてお求め安くなった…はずでしたが、逆にブームが起こったせいで、高級酒にプレミアがつき、余計に高くなってしまったという逆転現象が起こってしまいました。


越乃寒梅

バブル期の日本酒と言えばこのお酒です。プロレスラーのラッシャー木村さんが愛飲していた事でも有名(?)で、もともと「幻のお酒」と呼ばれるほど入手困難なお酒でした。そんなわけで定価の数倍のプレミアがついてしまい、さらには中身が別の酒だという偽造種が横行するなんてこともありました。でもほとんどの人が偽物に気が付かなかったみたいですね。まあブームなんてそんなものなのでしょう。


濁り酒

「どぶろく裁判」の判決が出た年でしたが、実は「濁り酒」が流行ったのもこの時期でした。

当時の「にごり酒」は傷みやすく、一年のうちでも特定の時期しか飲めないお酒でした。そのプレミア感もバブル期に会っていたのだと思います。しかし僕なんかには濃い味すぎて、さらには実は日本酒がイマイチ苦手の僕は、先輩にこれを勧められては悶絶しておりました。


バブル期のカクテル系

バブル期はトム・クルーズ主演の映画「カクテル」の影響もあり、カクテルが大いに流行りました。僕は当時バーカウンターの仕事をしていましたので、来る日も来る日も来る日も来る日も、ただひたすらに流行りのカクテルを作り続けていたものです。


カルーアミルク

カルーアコーヒーリキュールを牛乳で割るだけのカクテルですが、これがもう爆発的に売れておりました。とにかく女性客が来たら注文前にカルアミルクです。もう本当に飛ぶように売れておりまして、どんどんミルクが無くなっていく感じでした。僕はバーカウンターの中でミルクを注ぎながら「バーでミルクだなんて、キャプテンハーロックでもあるまいし」と、マニアックに毒づいていたものです。

「カルアミルク」と言えば、岡村靖幸さんの名曲も有名ですね。


ロングアイランドアイスティー

カルーアミルクを頼みような層が、二杯目を飲む際などに、このシャレオツな名前にひかれて主に若い女性が注文してくるカクテルなのですが…これを作るのはバーテンダーにとっては極悪の面倒臭さでして、週末の忙しい時間帯に注文されると、鈍器を探し出して後頭部をぶん殴りたい衝動にかられたものでした。

しかも全く美味しくないので(断言)みんな残すんですよね。だから「こんなレシピ(名前)を考えたやつは出てこい!」と、いつも思っていたものです。


ミスピーチ

バブル期には女性向けのお酒がいくつか発表されました。南果歩さんがイメージキャラクターを務めた「ミス・ピーチ」は、滅茶苦茶に甘い桃のお酒でした。BGMは桃姫というアーティストが担当してますが、その桃姫の正体は尾崎亜美さんであることがのちに明かされました。

ちなみに福島県の観光大使の名称は「ミスピーチ」ですね。はい。

バブルカクテル

六本木界隈の成金の間で流行ったのが高級ワインのロマネコンティを、同じく高級シャンパンのドンペリニヨン・ロゼで割るというオリジナルカクテルでした。

のちにバブルカクテルと言われる代物ですが、厳しい言い方をすれば、このどうしようもない品の無さというものが、あのバブルのというものの実態だったんでしょうね。


盛者必衰の理。

バブルはじけてやむなしです。


バブル時代まとめ100【イカ天、ティラミス、オバタリアンetc】1987-1991


コメント

このブログの人気の投稿

ミル・マスカラスの素顔【仮面貴族はアランドロン? 谷村新司?】 1971~

サディスティック・ミカ・バンド【伝説であり続けた伝説】1973‐2008

昭和の袋めん『本中華 醬』『これだね』『ほたてラーメン』復刻はあるのか? 1973~

IWGPヘビー級選手権【4つのベルトのデザインを振り返る】1987‐2021

星野仙一&落合博満【星野と落合の本当の関係】鉄拳制裁と俺流 1987-2018

ブルボン【ビスケットシリーズまとめ】衝撃の事実が発覚! 1965~

バンバンボール【田舎の商店に世界チャンピオンあらわる】1978

クロコーチ「モデルになった20世紀の重大事件」名作完結マンガを読む①

とにかく明るい80年代洋楽『女性ボーカル編』シャカシャカ!サウンド