マイケル・ジャクソンのニューアルバムの噂
世界のスーパースターとなったマイケルは、1984年のジャクソンズ・ビクトリーツアーの大成功を経てソロ歌手として完全独立します。翌1985年には「USA for Africa)プロジェクトの中心人物として、彼はライオネルリッチーと共に「We Are The World」を制作し、そこに集結した並いる大物アーティストのなかで、別格の存在感を示しました。

さらに翌1986年には、あのディズニーランド内に、立体映画「キャプテンEO」という、マイケルを主役に配したアトラクションがオープンしたのです。
あの「夢の国」に個人のアトラクション出来てしまうわけですから、当時のマイケルのスーパースターぶりというものが、個人の域など遥かに超えた、空前絶後、最強最大のものだったとお分かりいただけるでしょう。
先行シングルはPV無し
だから新たなものを求める層からは、この曲に対しての批判的な意見も散見しました。僕もその辺のギャップと言うものは、その意図も含めてイマイチよく解らなかったですね(ちなみに今でもよくわかりません)。
アルバムタイトル「BAD」
マイケルは「ロン毛&ハードなロック調の衣装」にイメージチェンジしており、そこで流されたサウンド(BADのサビ)もハードなものに様変わりしておりました。
そんなわけで何だか変だなと思っていましたら、実はもともとは写真家のグレッグ・ゴーマンが撮影した「レース越しのマイケルのポートレート」が、このアルバムのジャケット写真になるはずだったそうだったのです。
「BAD」発売…しかし…
1987年8月に「BAD」発売されました。CDのジャケットには
『歴史を変えたアルバム”スリラー”から五年。栄光と熱狂、謎と噂の渦の中、すべての回答をこの一枚に託して、今世紀最後のスーパースターが再び奇跡に挑む!』
という、普通なら「何をオーバーな」と思ってしまうような宣伝文句が載っておりましたが、ことマイケルの場合、それが全然大袈裟じゃないところが凄いと思いました。
僕はCDショップの店長と「1か月後に等身大のポップアップを譲ってもらう」約束をして、自転車で速攻で家に帰り、オーディオにCDをセットしました。
しかしながら… 僕はアルバムを一聴して「これはスリラーを越えられないな…」と思ったのです。
「BAD」全曲レビュー
アルバムのタイトルナンバーで、ハードかつ新しいマイケル像を確立した曲になりました。
ザ・ウェイ・ユー・メイク・ミー・フィール
最初に聞いた際には「なんだかダサい曲だな」というのが第一印象だったのです。ですのでシングルカットは意外だったのですが、PVでパフォーマンスを見て納得しました。
ちなみにマイケルは車の免許を持っていて実際に運転もするのです。それだけでも意外な感じもしますが、実はかなりのスピード狂で、違反切符はおろか留置所送りも経験したことがあるそうです。まあ留置所送りになったのは「黒人がロールスロイスに乗っているわけがない」という理不尽な理由からだそうですが…
Michael Jackson - Speed Demon (Official Video)
実写とクレイアニメを融合したPVで、マイケルとパパラッチの攻防をコミカルに描いたものになっています。クレイアニメは時間も手間もかかりますので、何気に相当なお金がかかっていそうです。
曲そのものは…まあフツーですかね。
Michael Jackson - Liberian Girl (Official Video)
PVには多数の有名人が出演しており、みんなでマイケルを探すという内容になっています。出演者は…
ジョン・トラボルタ、オリビア・ニュートンジョン、ポーラ・アブドゥル、デビー・ギブゾン、ダン・エイクロイド、アル・ヤンコビック、デビッド・カパーフィールド、ウーピー・ゴールドバーグ、ルー・ダイアモンド・フィリップス、オリヴィア・ハッセー、スティーブ・グッテンバーグ、リチャード・ドレイファス、カール・ウエザーズ、リッキー・シュローダー、クインシー・ジョーンズ、エイミー・アーミング、ドン・キング、ビバリー・ジョンソン、マルコム・ジャマール・ワーナー、ブリジット・ニールセン、ジャッキー・コリンズ、ジャスミン・ガイ、ロザンナ・アークエット、ビリーディー・ウィリアムズ、コリー・フェルドマン、ブレア・アンダーウッド、スーザン・サマーズ、ルー・フェリーニョ、メイム・ビアリ…といったところ。
「BAD」を「FAT」でパロったアル・ヤンコビックを呼んでいるあたりが良いですね。
前作の「スリラー」ではポール・マッカトニーと共演したマイケルですので、これで「エボニーアンドアイボリー」コンビを制覇したという事になります。しかし男のデュエットソングというものは、いつの時代も「女の子の取り合い」しか描くテーマはないですね。あんまり友情を歌いあげてもアレですし。
アナザー・パート・オブ・ミー
ディズニーランドのアトラクション「キャプテンEO」のエンディングテーマ曲で、マイケルらしいダンサブルなナンバーになっています。こと作品つくりにおいては、デビュー以降、名プロデューサーであるクインシージョーンズの支配下にあったマイケルですが、この作品はクインシーの手から完全に離れたところで制作したものであり、マイケルの自立を証明する曲にもなっています。個人的に好きな曲でしたので「クインシーグッジョブ!」と言いたいですね。
Michael Jackson - Another Part of Me (Official Video)
PVはBADツアーでのライブステージになっています。しかしほんとリズにティナ・タナーにダイアナ妃にと、来場するセレブも究極の面子ですね。
マン・イン・ザ・ミラー
『キャント・ストップ・ラヴィング・ユー』でデュエットしたサイーダ・ギャレットが作曲した入魂のナンバーです。コンサートでのラストナンバーに用いられる曲で、マイケルファンの間でも人気が高い曲であります。シングルのジャケットには、マイケルの来日時に発生した誘拐殺人事件の被害者に捧げる言葉が記されておりました。サビの分厚いゴスペルコーラスが感動的な楽曲でして、訴えられるメッセージも含めて僕も大好きな曲です。
PVは過去のニュース映像をコラージュしたもので、反戦、反人種差別、反環境破壊をテーマにしたものになっております。ちなみにマイケルは来日時に永田町幼稚園を訪れた際のワンカットのみ映っています。
キャント・ストップ・ラヴィング・ユー
先ほど説明したとおりです。
ダーティー・ダイアナ
スムーズ・クリミナル
映画「ムーンウォーカー」の核となった曲です。そしてもともとアルバムのタイトルは「BAD」ではなく「スムーズクリミナル」だったとも言われています。マイケルのこの曲に対する思い入れの深さを感じますね。
Michael Jackson - Smooth Criminal (Official Video)
ショートフィルムは大掛かりなものになり、結局これが発展して『MOON WALKER』が制作されることになります。
帽子にスーツ姿のマイケルはその後も定番になりますが、もしアルバムが『BAD』ではなく『Smooth Criminal』だった場合、この姿がアルバムスタンダードになったのでしょうね。
リーブ・ミー・アローン
CDのみのボーナストラック曲ですが、アルバムから8枚目のシングルとしてリリースされています。タイトル通り「僕をほっといてくれ!」というマイケルの心の叫びの曲ですね。個人的にはなんだか演歌のようというか…
曲自体はあまり好きではないのですが、PVはなかなか面白い仕上がりになっています。全編コマ撮りのクラシカルな技法で作られており、マイケルジャクソンにまつわる噂が満載のPVになっています。ではPVから確認できた噂はというと…
「マイケルの妙なダイエット」「エリザベステイラーに求婚」「ブルックシールズと結婚」「整形」「マイケルとダイアナロスは同一人物」「マイケルにチャクラが開く」「宇宙人と結婚」「50歳で冷凍凍結」「酸素室で睡眠」「アインシュタインの脳を購入」「自宅にエリザベルテイラーの寝殿」「エレファントマンの骨を購入」…
「BAD」は失敗作?
『BAD』を一聴して僕が思ったのは「これは売れセンじゃないな」という感じでした。当時の感覚だと、本当にあまりにガチガチのサウンドだったのです。
個人的にマイケルの良さというのは、根底にモータウンのグルーヴィーなサウンドがあるところだと思っておりましたので、シンクラヴィア(当時の最先端1億円シンセ)の比重が高い「ハイテクサウンド」というものに、新しさこそは感じるものの、これがとても一般受けするものには思えなかったのです。
日本の販売担当者も
「メロディアス&ダンサブルな前の二作品に比べ、最新サウンドにこだわり過ぎていてガチガチに硬かった。日本公演という大きな話題が無かったら、売り上げは厳しかったと思う」
と正直な感想を述べています(日本公演については回を改めてまた)。
実は全米でもそれはそうでありました。『BAD』は発売された87年中に1000万枚を売り上げ、シングルカット3作品とも1位になったのですが、しかしモンスターアルバムである「スリラー」に比べると、その売り上げは爆発的とは言い難いものがありました。
そしてそのBADの売り上げ不振(と言っても『スリラー』と比較してなんだけど)は、販売から半年を経たずして、早くもマイケルのキャリアに暗い影を落としつつあったのです。
負け戦予想のグラミー賞
1988のグラミー賞でマイケルのアルバム『BAD』は、多くの部門でノミネートされておりました。しかしながら8冠に輝いた『スリラー』に対し、今回の『BAD』は「主要部門の受賞はないだろう」という予想が大半だったのです(実際、受賞は「録音賞」のみに終わった)。
その一方で、この年度は『U2』が躍進しておりまして、彼等のアルバム『ヨシュア・ツリー』が、マイケルの『BAD』の至上命題だった『最優秀アルバム賞』を受賞するだろうと言われておりました(実際受賞)。
グラミー賞の神パフォーマンス
そこで行われたのがこのパフォーマンスです。
Michael Jackson Live At Grammy's 1988 (HD)
「賞は獲れなかったが、この夜の勝者はマイケルだった」
という、いかにも全米的な話題になったのです。
「BAD」が復活
その後、売り上げに陰りが見えていた『BAD』は息を吹き返し、シングルカットされた「マン・イン・ザ・ミラー」と「ダーティー・ダイアナ」曲がビルボード1位となりました。そして結果的に
「同一アルバムからのシングル5曲連続1位獲得」
という新たな金字塔を打ち立てたわけです。『BAD』はマイケルの死後も再評価され続け、今に至るまで様々な記念盤が発売され続けているのです。
パフォーマンスというもの
さてさてさて・・・
これらから解るように『ちゃんと人前に立ってのライブパフォーマンス』というものは、やっぱり重要な事なのだなあと、改めて感じたりします。
新型コロナの時代。
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