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鈴木保奈美【東京ラブストーリー】バブル末期の等身大の恋愛ドラマ 1991

 東京ラブストーリーは柴門ふみの同名漫画を原作としたフジテレビ系列で1991年初頭からオンエアされたドラマで、小田和正が手掛けた主題歌「ラブ・ストーリーは突然に」とともに社会現象的なブームを巻き起こしました。今日はそんな話です。

「東京ラブストーリー」とは?

放送日時ほか

「東京ラブストーリー」は、1991年1月7日~3月18日、フジテレビ系の「月9」で放送されていた恋愛ドラマです。主演は鈴木保奈美&織田裕二で、他に有森也実や江口洋介や千堂あきほといった当時の人気俳優が、主演者とほぼ並ぶ形で脇を固めていました。

あらすじ

上京してスポーツ用品メーカーに中途採用された永尾完治は、そこで自由気ままにポジティブに生きる赤名リカと出会う。完治はリカと恋仲になっていくが、その後、同郷で先に上京していた医大生の三上健一、高校時代の憧れであった関口里美と再会したことから、彼等を取り巻く恋模様というものは、各々の周囲も巻き込むかたちで、とても複雑なものとなっていった。

成功が約束された作品

柴門ふみブーム

ドラマ「東京ラブストーリー」は、半ば初めから成功が約束されていたものでありました。というのも、当時、バブル期の世の中では、原作者の「柴門ふみブーム」が巻き起こっており、前々年の1989年に放送されたドラマ「同・級・生」も、「柴門ふみ原作」の名のもと、高視聴率を獲得していたのです。それゆえ「同・級・生」よりも、ドラマとの親和性が高いと言われていた「東京ラブストーリー」はドラマ化の実現の可否も含めて大いに注目を浴びていたのでした。

プロデュ―サー大多亮

「東京ラブストーリー」のプロデューサーは大多亮氏が務めました。1980年代後半からトレンディドラマで名を上げていた大多氏でしたが、1990年夏にトレンディドラマの決定版として、フジテレビが総力を上げて制作した「恋のパラダイス」というドラマが、期待に反して色良い結果を残せなかったのです。

「恋のパラダイス」の失敗により大きな挫折を味わった大多氏は、自らのプロデュース作品を「憧れのトレンディドラマ」から「等身大の純愛路線ドラマ」へと大きく舵を切りました。
そして1990年の秋ドラマにおいて、中山美穂主演の純愛ドラマ「すてきな片想い」をプロデュースします。するとこのドラマは平均視聴率20%超えのヒット作となったのです。これにより純愛路線に大きな手応えを感じた大多氏は、満を侍して話題作「東京ラブストーリー」の制作に入っていきました。

キャスティング

当初のキャスト

大多氏は当時自分と不倫関係にあった鈴木保奈美さんを軸に、「東京ラブストーリー」のキャストを組み立てました。その中で鈴木さんから「さとみよりもリカを演じたい」と言われた事により、主要5キャストをこのように決めたのです。

赤名リカ(鈴木保奈美)

永尾完治(緒方直人)

関口さとみ(有森也実)

三上健一(本木雅弘)

長崎尚子(石田ゆり子)

緒方直人から織田裕二に

ドラマ化にあたって大多氏は、もともと漫画では完治が主役だった物語を「リカと完治のW主役」のシナリオへとリライトさせます。そして自身の愛人である鈴木保奈美さんを筆頭表記にして、彼女の「主演作」としたのです。

これに反発したのは完治役の緒方直人さんでした。結局、話はまとまらず緒方さんは完治役を降板する事になります。

正式決定したキャスト

大多氏はキャスティングを練り直します。そして最終的に以下のキャストで決定しました。

  赤名リカ(鈴木保奈美)

  永尾完治(織田裕二)

  関口さとみ(有森也美)

  三上健一(江口良介)

  長崎尚子(千堂あきほ)


音楽

主題歌「ラブ・ストーリーは突然に」

オフコースの大ファンだった大多氏は、当時ソロデビューしてまもなくだった小田和正さんに主題歌を依頼します。

小田さんは『東京ラブストーリー』というドラマの主題歌の依頼が突然来たから」という、結構いい加減な理由から、主題歌のタイトルを「ラブ・ストーリーは突然に」と決め、最初は別の曲(のちの『FAR EAST CLUB BAND SONG』)を大多氏に提示しました。

しかしその出来に対して大多氏は納得せず、

「『YES NO』と『君が嘘をついた』を合体させたような曲が欲しい」

と、かなり具体的に要求したそうです。

あの小田さんに実質的なダメ出しをしたのですから、それはもうかなり覚悟が必要な事だったでしょう。そしてそんなところからも、この「東京ラブストーリー」に懸けている、大多氏の本気度が伺えると思うのです。

そんな大多氏の執念に答える形で小田さんが新たに作り上げたのが、総売り上げ270万枚の大ヒットとなったあのバージョンの「ラブ・ストーリーは突然に」だったのです。

ドラマの名シーンと小田さんの楽曲は見事にシンクロし、正に相乗効果で人気が爆上がりしていったのでした。

日向敏文の劇奏

音楽面で言えば日向敏文さんが担当した劇奏も大変な評判を呼びました。なかでも「 Tenderly~Rica's Theme」や「Promise」といった楽曲は人気を集め、そのサウンドトラックアルバムは、TVドラマのものとしては異例の高い売り上げを記録しました。

日向氏のアルバムの商業的成功により、この後はドラマのサウンドトラックアルバムの制作が一般的なものとなっていきました。


ヒットの要因


「東京ラブストーリー」は若い世代を中心に熱狂的な支持を受け、最終回の視聴率は32.3%を記録する大ヒット作となりました。ここで改めてヒットの要因を考えてみたいと思います。

坂元裕二の等身大の脚本

東京ラブストーリーの脚本を任されたのは、当時23歳の坂元裕二氏でした。坂元氏は「フジテレビヤングシナリオ大賞」の第一回の受賞者であり、大多プロデューサーの秘蔵っ子でもありました。坂元氏は太田氏の意向を受け、リカを中心とした都会の若者の純愛ドラマを描き上げていきました。

柴門ふみ氏が描いた原作に対し、坂元氏が書いたシナリオは、明らかにライトタッチなものとなっていました。原作の「赤名リカ」は「パニック障害持ちの魔性の女」という重要な要素を持った女性でしたが、坂元氏はその設定をすっかり外し、「都会に生きる自分に正直なポジティブ女」という「新しい赤名リカ像」を確立します。それは若い女性に圧倒的な共感を持って受け入れられていきました。

鈴木保奈美の透明感

「東京ラブストーリー」は、これまでトレンディドラマの脇役専門だった鈴木保奈美さんが、初めて大人ドラマで主役を張った作品となりました。

大多氏との不倫関係など、当時の鈴木さんは現実世界でも恋愛体質の女性であったので、このドラマの赤名リカ役は、彼女が等身大で演じることのできるハマり役だったのです。

また彼女独特の透明感は、バブル期のパワフルウーマンであるリカの過激性を薄める効果を持っていました。そしてそれは「ねえ、セックスしようよ」などに代表される「赤名語」からも、ある種の生々しさを排除できるような力を持っていました。

そんなわけで大多氏の狙い通り「鈴木保奈美版赤名リカ」の魅力に引っ張られる形で「東京ラブストーリー」は大ヒットし、それは鈴木保奈美さんの代表作となったのです。

織田裕二の純粋性

完治役がもし当初の予定通り緒方直人さんが演じたとしたら、それは「優柔不断で少し気弱な完治」という原作のキャラクターに、より近いものになったと思います。

しかしそれを織田裕二さんが演じたことにより「素朴で純情な完治」という、ドラマオリジナルの新たなキャラクターそして生まれ変わったのです。そしてそれはバブル期の「純愛ブーム」というものに、完全にマッチしていったのでした。

バブル期は恋愛だけは純粋だった

「東京ラブストーリー」のヒットの最大の要因は「バブル期の純愛ブーム」に乗っていったことが大きかったと思います。一見「軽い」と思われがちなバブル期ですが、俵万智さんの「サラダ記念日」や村上春樹さんの「ノルウェイの森」や松任谷由実さんの「Delight Slight Light KISS」などがヒットしたように、こと恋愛というものに関しては、今よりも純粋だったように思います。

そんな時代に、自分と同世代の人間が脚本を書き、自分と同世代の俳優たちが、東京を舞台に恋愛群像劇を繰り広げるこのドラマは、熱狂的に受け入れられていったのだと思います。

おのおのの恋愛体験を重ねて

個人的なことを思い出しますと、当時20歳だった僕(上京二年目)なんかも、恋愛関係で悩んだりしておりまして、この「東京ラブストーリー」を見ながら、近場に住む友人とともに毎週「恋愛談義」をしておりました。 

「カンチは優柔不断すぎる」「さとみは腹黒い」「長崎が不憫だ」「三上はタッチの原田みたいだ」なんて話を熱心にしていますと、なんだか実に心が休まりましたね。うん。まあ本当はそんな事してないで、実際に相手と向き合うべきだったのでしょうが…

その後、10年20年30年と人生は進み…

カーステで「ラブストーリーは突然に」をかけたりしますと、同世代の同乗者なんかとは、いつぞやのあの日のように「東ラブ恋愛談義」になったりするのです。そういうのも実に面白いことですね。うん。

あの日、あの時、あの場所で、本当に色々あったのだけれど、少なくとも自分にとっては、そのすべてが良い思い出だったなあ…なんて今さらセンチメンタルな気持ちになる事こそが、この作品の力だと言えるんでしょうね。(おわり)


TV&CM

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ねるとん紅鯨団【バブル期を彩った素人参加お見合い番組】1987-1994

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